中弁連の意見

 2017年(平成29年)6月15日、いわゆる共謀罪の創設を含む「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「本法律」という。)が、参議院本会議において、可決成立した。

 本法律は、過去3回にわたり廃案となった共謀罪法案について、共謀罪という罪名を「テロ等組織的犯罪準備罪」と改め、構成要件を若干修正し、組織犯罪処罰法の改正案として先の通常国会に提出されていたものである。

 当連合会は、共謀罪は憲法が保障する思想・信条の自由等の基本的人権を侵害し、かつ、捜査権限の濫用による適正手続に違反する危険性が極めて高いため、2006年(平成18年)10月13日に、当時の共謀罪法案に反対する決議を行っているが、本法律もその危険性に変わりはない。

 それゆえ、本法律に対しては、日本弁護士連合会及び当連合会を構成する5つの単位弁護士会のほか全国で46の単位弁護士会、さらに、2つの連合会が,本法律の成立に反対する会長声明、理事長声明を相次いで発出していた。また、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯もあった。

 本法律は、犯罪を「計画」した行為を犯罪として処罰するものであり、既遂処罰を原則とする我が国の刑法の基本原則に合致しない。また、犯罪主体である「組織的犯罪集団」がテロ組織、暴力団、薬物密売集団等に限定されず、一般の市民団体、労働組合等が処罰対象となるおそれがあることに加え、犯罪の計画の時点から捜査の対象になり、捜査機関の市民に対する監視が更に横行するおそれがある。そして、本法律の処罰対象犯罪である277の罪には、組織犯罪やテロ犯罪とは無関係な犯罪が含まれている。

 本法律には、上記のような問題があるにも関わらず、十分な議論を経ないまま衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続を経て成立に至ったことは極めて遺憾である。本法律の成立に対しては、既に日本弁護士連合会のほか全国で多数の単位弁護士会及び連合会が、抗議する声明を発出している。

 当連合会は、本法律の成立に対して強く抗議するとともに、本法律が恣意的に運用されることがないように注視するだけではなく、日本弁護士連合会、全国の単位弁護士会及び連合会とともに、今後、本法律の廃止に向けた活動を行う所存である。

 

2017年(平成29年)9月6日

中国地方弁護士会連合会 理事長 爲末 和政