中弁連の意見
安全保障法制に関する法案(自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、PKO協力法など計10本の既存の法律を改定する法案及び国際平和支援法案)は、2015年(平成27年)7月16日の衆議院本会議で可決されたことに続き、同年9月19日未明、参議院本会議においても採決が強行され可決された(以下これらを「本法律」という)。
本法律は、自衛隊が他国の武力紛争にも加担して武力行使ができるようにする集団的自衛権を実現し、後方支援の名目で他国軍隊への弾薬及び燃料の補給等を世界のあらゆる地域で可能にするものであり、憲法第9条第1項が「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めていることに明らかに違反するものである。
集団的自衛権の行使が憲法違反であることは、歴代内閣の憲法解釈においても確認されてきたことである。そして、本法律が憲法違反であることは、中国地方弁護士会連合会をはじめ、日本弁護士連合会、全国の弁護士会及び弁護士会連合会が繰り返し指摘してきただけでなく、大多数の憲法学者、元最高裁判所長官を含む多くの元裁判官、及び歴代元内閣法制局長官も明言しているところである。
しかるに、政府は、憲法改正手続を経ることなく、昨年7月1日、歴代内閣の憲法解釈を閣議決定により変更し、憲法に違反する内容の安全保障法制に関する法案を強引に国会に提出した。この政府の行動は、立憲主義という憲法による政治権力への統制規範を無視するものであり、法の支配に反する行為である。
憲法改正手続を経ることなく、実質的に憲法を改正しようとする本法律の制定過程は、憲法第9条や国民主権に違反するのみならず、立憲主義を無視しており最大の問題である。立憲主義を無視したこのような行為を容認すれば、今後恣意的な権力行使に歯止めがきかなり、基本的人権を擁護することができなくなる。
上記のとおり本法律は、憲法違反の法律である以上、憲法第98条第1項により無効である。無効な本法律に基づいて行われる政府の政策や自衛隊の活動も憲法違反となり効力を有しないものである。
よって、中国地方弁護士会連合会は、国に対し、集団的自衛権を可能とする安全保障法制に関する法案が強行採決により可決されたことに対して強く抗議するとともに、憲法に違反し無効な法律の速やかな廃止を求めるものである。
2015年(平成27年)10月8日
中国方弁護士会連合会
理事長 舩木 孝和