中弁連の意見

 中国地方弁護士会連合会は、憲法改正による国家緊急権の創設につき、ひとたび創設されるや、その濫用により、立憲主義を没却する危険性が極めて高いこと、また、緊急事態が発生した後に、急遽、国家へ権力を集中させることについては、近時発生した大規模災害における検証を踏まえても必要性がないだけでなく弊害が明らかであることから、断固として反対する。

 以上のとおり決議する。

2016年(平成28年)10月14日
中国地方弁護士大会

提 案 理 由

1 国家緊急権が立憲主義を没却する危険性が極めて高いこと

 安倍内閣総理大臣は、2015年(平成27年)11月開催の衆参予算委員会において国家緊急事態条項の創設に触れ、さらに、2016年(平成28年)7月の参議院選挙直後、国家緊急権を含む自民党憲法改正草案を前提とする改憲への意欲を示している。ここにいう国家緊急事態条項とは、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害等、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して、非常措置をとる権限、つまり、憲法学上のいわゆる国家緊急権のことを指している。

 しかし、憲法に国家緊急権を創設するということは、内閣総理大臣を長とする行政権力に対して人権保障及び権力分立制の停止権限を認めることであり、国家権力を制約して人権保障を実現しようとしている憲法の趣旨を没却し、権力の濫用を生む危険がある。

 この点、歴史的にみても、当時最も民主的な憲法と言われたワイマール憲法下のドイツにおけるナチスの独裁が、国家緊急権を利用した上での授権法により生じたことや、日本においても、関東大震災時に戒厳が実施され、軍の指示のもと市民らが組織した自警団による朝鮮人や社会主義者の大量虐殺が行われたこと等、国家緊急権が濫用され、国民の自由及び権利が不当に侵害された例は枚挙にいとまがない。

 近時においても、クーデターが目論まれたトルコ共和国において、2016年(平成28年)7月20日に、大統領が同国の憲法第120条に規定されている非常事態宣言を発令し、国会の審議や議決を経ることなく、法律と同等の効力を持つ政令を発布するに至った。

 この間、トルコにおいては、クーデターの動きを受けて、約1500人の裁判官や検察官が拘束され、2700名を超える裁判官が解任をされる等、法の支配が崩壊する事態が生じていた上、かかる非常事態宣言に基づく国家緊急権の行使によって、報道機関131社の閉鎖が命じられ、言論統制による報道の自由や知る権利といった重大な権利が侵害されるという事態が生じているのであって、現代社会においても、権力の濫用の危険性は、常に存在するものと言わざるを得ない。

 こうした濫用の危険がある国家緊急権に関し、我が国においては、あえて、現行憲法に国家緊急権を置かなかったものであるが、その趣旨は、第13回帝国憲法改正案委員会において、金森徳治郎国務大臣が、「民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、随テ此ノ憲法ハ左様ナル非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、随テ特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時会議ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、同時ニ他ノ一面ニ於テ、実際ノ特殊ナ場合ニ応ズル具体的ナ必要ナ規定ハ、平素カラ濫用ノ虞ナキ姿ニ於テ準備スルヤウニ規定ヲ完備シテオクコトガ適当デアラウト思フ訳デアリマス」等と、濫用の危険性に重きを置いて、国家緊急権を制定しないことを明言しているのであって、かかる制定時の経緯を軽視すべきではない。

 このように、日本国憲法は、一旦濫用されれば憲法秩序の破壊、否定に至る国家緊急権を意図的に明文で規定しなかったというべきであり、日本国憲法を改正して国家緊急権を創設する必要は全くなく、緊急事態を想定して立法されている現行の法体系で十分対応することが可能である。前述の金森国務大臣の答弁においても、緊急時に必要な法律を濫用のおそれがないよう完備しておくことが適当と述べられており、憲法制定時から国家緊急権ではなく法律で対応することが予定されていたものである。

 ちなみに、現行法においても、テロに対しては、局地的な犯罪行為であり、日頃の警察権を含む司法手続において対応が可能であるほか、国民保護法や事態対処法等のテロ対策基本法において、政府に権限を集中させて対処する法律が存在する。
 また、内乱に対しては、刑法上内乱罪が規定されており、犯罪行為として対応が可能であるほか、必要に応じて、警察法上の緊急事態(第71条・第74条)や、自衛隊法上の「防衛出動」「治安出動」(第76条・第78条・第81条)を発動することも可能なのであって、国家緊急権に依拠する必要性はない。

 このほか、大規模災害に関しては、後述する法令で対応すれば足りる。

 緊急事態に対しては、これに対処する事前の法整備と準備こそが肝要であって、安易に国家緊急権の創設を認めることは、緊急事態への具体的な備えを放棄するに等しく、断固として容認することはできない。

 

2 政府による国家緊急権制定への動きについて 

 ところで、冒頭に述べた安倍内閣総理大臣による憲法改正の動きについては、その具体的内容が、以下に掲げる自由民主党の日本国憲法改正草案に示されている。しかしながら、かかる自民党の憲法改正草案は、人権侵害の危険性が極めて高いものと言わざるを得ない。

(1)自民党の日本国憲法改正草案(自由民主党 2012年(平成24年)4月27日)では、第9章 緊急事態 第98条第1項は「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言をすることができる。」とされている。
 この案によると、どのような場合に「緊急事態」とするかを法律で定めることが可能であることから、当初は、戦争や内乱、大規模災害等を規定しつつ、後に、テロや大規模なストライキ、デモ等を国会の決議によって追加することができるため、憲法を停止しうる緊急事態を、憲法改正の手続を経ることなく拡大する危険性がある。
 さらに、同草案第99条第3項前段によると、「何人も・・・国その他公の機関の指示に従わなければならない。」と規定されており、まずもって、制約される人権の対象が無限定である。
 加えて、制約の程度については、同項下段において、「第14条、18条、19条、21条その他の基本的人権に関する規定は最大限に尊重されなければならない。」と、基本的人権を侵害してはならないとはされておらず、また、具体的歯止めも示されていない。
 こうした中、仮に、現場の混乱防止等を理由に、報道やインターネット通信が制限された場合には、国民の知る権利が損なわれ、批判されないまま政策が推し進められるという深刻な事態が生じうる。
 かつて、1945年(昭和20年)の三河地震においては、死者不明者2306名の大震災であったにもかかわらず、マスコミ各社は、政府から緊急指示による言論統制を受け、翌日の新聞には、三面記事において、小さく掲載されたのみという事態も発生しているのであって、過去の教訓も踏まえ、知る権利が脅かされるような事態を看過することはできない。

(2)また、同草案によると、緊急事態の期間に制限がないため、国会の同意があれば、いつまでも行使をすることが可能である。

(3)さらに、緊急事態について、「国会の閉会中や、衆議院解散により、臨時国会の召集の決定や参議院の緊急集会の請求ができないとき」といった限定要件がないため、国会の会期中であっても、法律と同等の効力を持つ政令を制定できる。
 この点、大日本帝国憲法の緊急勅令でさえ、議会閉会のときという要件が付されていたのであって、政府による緊急事態での政令、すなわち効果において法律と同等の立法には、国会の統制が全く及ばないという危険性を伴う。

 以上のとおり、自民党の憲法改正草案における国家緊急権の規定に関しては、立憲主義を没却し、政治の独裁化を助長するものであることから、その創設についてはおよそ是認できない。


3 災害発生時、国家緊急権が不要であることの具体的検証

(1)2016年(平成28年)4月に発生した熊本地震を受けて、菅内閣官房長官は、災害を理由に憲法を改正して緊急事態条項を創設することを検討する旨を言明した。
 しかし、災害対策を理由とする国家緊急権が不要であるにもかかわらず、政府が、あえて創設に言及するのは、憲法改正の困難さに直面する政局の中にあって、まずは国民の理解が得やすく、改正しやすいところから、試しに改正を試みようとする意図、いわゆる「お試し改憲」を狙っているのではとの疑いを生ぜしめるものと言わざるを得ない。
 とりわけ、災害対策を理由とする国家緊急権について、その必要性が認められないことについては、以下の具体的事実からも明らかである。

(2)衆議院解散時に大規模災害が発生しても問題はないこと
 この点、衆議院が解散しているときを想定して、国家緊急権を創設すべきだとの主張もあるが、衆議院の解散後、選挙前に大規模災害が発生した場合、内閣は、参議院の緊急集会を求めることができるため(憲法第54条第2項)、特段、問題はない。
 また、衆参両院のダブル選挙の直前に大規模災害があった場合であっても、非改選の参議院議員が2分の1おり、定足数は3分の1で足りるため、緊急集会を請求しうる。なお、衆議院議員の任期満了による選挙直前に大規模災害が発生したときに言及される場合もあるが、任期満了による選挙は、憲法制定後68年間のうち1回しかなく、大規模災害が同時に発生する可能性は、著しく低い。仮に、希有な確率で発災があった場合であっても、立憲主義に立った憲法の解釈により、内閣が参議院の緊急集会を求めうると解されることから、実益のある議論とは考えられない。

(3)現行法によって対処可能であること
 次に、現行法によれば、災害対策基本法によって、大規模災害時、衆議院の解散中で臨時国会も、参議院の緊急集会も請求できないとき、一時的に、内閣に立法権が移転する旨の規定がある。
 具体的には、内閣は、物資の配給、物の価格についての統制、支払いの猶予、外国からの支援について、これら4つの項目に関して、政令を制定することができるとされている(災害対策基本法第109条の2)。
 この緊急政令については、その後、直ちに国会を召集して同意がないときは、政令は効力を失うものとされ、国会によるコントロールを意識しつつ、緊急事態への対応を可能とするものである。
 また、内閣総理大臣には、各自治体や省庁に対する指示権や、防衛大臣に対する部隊の派遣要請等が認められているほか(大規模地震対策特別措置法)、警察庁長官への直接指揮も規定されている(警察法第72条)。
 加えて、原子力事故の場合には、避難指示等を実行できる旨の規定も存在する(原子力災害対策特別措置法)。
 このように、一時的に、大規模災害時、国会が機能しない場合や、緊急事態に対応するため、内閣に権限を集約する規定が現行法には存在する。
 さらに、災害の現場において、被災者支援活動の陣頭指揮をとる都道府県知事や、市町村長にも、一定の権限が与えられている。
 すなわち、都道府県知事は、医療機関や土木従事者、運輸関係者らに対し、被災者支援活動についての従事命令を発動しうる(災害救助法第7条、第31条)。
 また、がれきの撤去等に関して、市町村長は、工作物または物件等に必要な措置をとることができるとされ、撤去等を行いうる(災害対策基本法第64条第2項)。さらに、自衛隊のヘリコプター等を着陸させる場所等についても、市町村長は、他人の土地や建物を一時使用もしくは収用することができる仕組みも存在する(同第64条第1項)。
 これらに加えて、平時より、各自治体は、石油会社その他民間団体と災害時の協定を締結しており、かかる協定を活用することで、スムーズな被災者支援活動等を行うことができる体制も存在する。
 以上のとおり、災害に関する現行法によっても、ここに掲げた一例のように、内閣総理大臣や自治体の首長に権限を付与しているのであり、これら法令を適切に活用することによって、災害直後、機動的な支援を実施することが可能であるから、あえて、国家緊急権なるものを制定する必要性が存在しない。

(4)災害時、国に権力を集中させることの弊害について
 我が国に未曾有の被害をもたらした、東日本大震災に関していえば、日本弁護士連合会が、被災3県(福島・岩手・宮城)の市町村長にヒアリングを行ったところ、市町村の権限を強化すべきとした回答が25%、現状維持とした回答が71%であるのに対し、権限を軽減すべき(国の権限を強化すべき)とした回答は4%にすぎなかった。 [1]
 東日本大震災の例からみても、地方自治体の権限を強化する、あるいは、現行の法令を適切に運用することにより、被災地の現状に即した支援を実施しうるのであって、国に強力な権限を委譲しなければならないという立法事実はない。
 むしろ、被災の現場を熟知していない国が、不適切な指示を出すことによって、被害を拡大させるという懸念が存在する。 [2]
 災害時に国がすべきことは、現場の判断を尊重しながら、専門家の派遣や、権限の委譲、自治体間の調整、ならびに予算を委ねて支援することである。
 万が一、被災によって市町村が機能しない場合には、都道府県知事が事務を代行する規定があり(災害対策基本法第73条)、さらに、被災が広範囲にわたり、都道府県も機能しない場合には、内閣総理大臣が代行する義務があるとの規定も存在することから(同法第86条の13)、原則として、災害に対する事務は、被災自治体の判断に委ねることとしても、現行法上問題はない。 [3]
 中国地方は、近時でいえば、2014年(平成26年)8月に発生し、土砂災害としては未曾有の被害をもたらした広島市豪雨災害、2013年(平成25年)7月の山口・島根豪雨災害等があり、さらには、過去に遡れば、岡山県でも数度にわたって台風等の風水害に見舞われている等、全国的にも豪雨災害の危険地域が密集しているほか、2000年(平成12年)に発生した鳥取県西部地震では甚大な家屋被害が生じる等、いつ災害が発生しても不思議ではない地域であり、管内の県市町村による地域防災計画の検証及び訓練こそが喫緊の課題といえる。 [4]

(5)以上のとおり、我が国には、災害の緊急時に対応すべく法令が整備されていること、地方自治体が主体的役割を果たすことが減災に直結すること、命を救うためには平時の備えが肝要であって災害発生後の国家緊急権の発動は何ら役に立たないこと等の理由からして、災害対策を理由とする緊急事態条項の憲法上の創設には、およそ立法事実が存在しない。


4 結語

 現在、災害を理由とする国家緊急権の創設については、27の弁護士会と、東北弁護士会連合会及び関東弁護士会連合会が反対の声明を発出している。反対の声明を出している弁護士会は、東日本大震災等の大規模な被災を経験した被災地弁護士会をはじめとする弁護士会であり、国家緊急権創設の立法事実が存在しないことは明白である。
 当連合会としては、国家緊急権の創設については、立憲主義を没却する危険性が極めて高く、また、現に発生した災害の検証の結果からしても、国家緊急権を必要とする立法事実が全く認められないことから、いかなる理由をもってしても是認できず、断固として反対するべく、改めて、ここに決議する。

以上

 

[1] 権限を軽減すべきとした回答も、その理由は、がれきの撤去等が財産権の関係で障害となったため、がれきの撤去等を国に任せたいというものであり、これは、先に掲げた災害対策基本法に基づく、障害物撤去の規定の誤解によるものである。
[2] 例えば、福島第一原発事故の被害にあった福島県浪江町の町長によると、震災当日、津波で流された被災者を救援に行き、日が暮れたので翌日救助に行く旨を告げて撤退したが、翌日、内閣総理大臣より、原発から10キロメートル以上の避難指示が発せられ、放射性物質の飛散が少なかったにもかかわらず、救助に行けず見殺しにすることとなった、という事例が報告されている。
また、熊本地震の際には、同震災が発生した4月14日の翌日、政府が、「全避難者の屋内避難」の方針を示したところ、熊本県知事から、「余震が怖くて建物の中にいられないという現場被災者の気持ちが分かっていない」との苦言が呈されたという事実があった。本来、屋内退避等の指示は、災害対策基本法第60条により、市町村長が行うべきものである。 
このとき、仮に、緊急事態条項に基づき、震災翌日である15日に「屋内避難」を義務づける政令が定められていたならば、翌16日未明に発生した、本震とされるマグニチュード7.3の地震で、どれほど多くの犠牲者が出たか、想像に難くない。
[3] 災害時における国家緊急権が必要であるとの理由の中に、国に強力な権限を付与することによって、多数の犠牲者の発生を防ぎうる場合があると主張する国会議員がいる。
しかし、例えば、福島第一原発付近の双葉病院から避難した高齢者が、寝たきりの状態で、目的地も定まらないまま、収容先を転々とする中、避難等の過程において50名ほどの犠牲者を出したという事態が生じたが、これら高齢者らの命を救うにあたって、災害発生後に国家権力を集中させることに何ら意味がないことは明白である。
そもそも、国は防災基本計画の策定を行い、合わせて、都道府県市町村は、地域防災計画を策定して、防災教育や防災訓練の実施を行うべき義務を負っている。仮に、国や自治体が、避難ルートの想定や、車両・ドライバーの確保、医療施設の確保や長期滞在場所の開設等の準備を関係法令に照らして的確に実施していれば、犠牲者を減らすことが可能だったものと思われ、事前の準備こそが肝要であったことは論をまたない。
[4] 2014年(平成26年)8月に発生した広島市豪雨災害においても、「避難対策等検証部会」における報告書において、地域防災計画に従ったサイレンの吹鳴が実施されなかったことや、避難勧告の発令時に避難所の開設ができず結果として避難が遅滞したこと、等が指摘されており、このことが多くの犠牲者を出した一因と考えられている。
しかし、この点に関しては、実態に見合った地域防災計画の策定や、計画の実行にあたり、実地訓練等を平時より実施することが重要なのであって、国家緊急権を要する場面はない。
さらに、2016年(平成28年)4月に発生した熊本地震においては、避難所等での生活環境があまりに劣悪であり、車中泊を繰り返していた被災者を中心として多数の災害関連死を招来したが、このことは、都道府県が国との間で、災害救助法に基づく被災者支援の特別基準について、速やかに協議を行っていれば防ぎ得たケースも存在すると考えられ、平時からの災害関連法規の適切な理解や運用こそが肝要であることを示している。

 

参考資料

自由民主党 平成24年4月27日(決定)日本国憲法改正草案(抄)

(法の下の平等)
第十四条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

(身体の拘束及び苦役からの自由)
第十八条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

(思想及び良心の自由)
第十九条 思想及び良心の自由は、保障する。

(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

(予算案の議決等に関する衆議院の優越)
第六十条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。